この五十年、京都市文化観光資源保護財団は独自の視点で助成事業に取り組んできました。それは大きく三つの方向性に示されています。

一つは、未だ指定・選定・登録に至っていないものの、潜在的に高い価値を有する建造物や美術工芸品等の修理等を主な対象とすること。これは既成の価値のランク付けを前提としたものではありません。人々に愛されつづけ、生活の中に根づきながら、地道な努力によって大切に守られてきた宝物を、所有者や保存に奔走されている方々が自分たちの力で次の世代へ繋いでいこうとする心意気を支援するものなのです。これが今、文化財保護に求められている最も基本的な姿勢ではないでしょうか。

もう一つは、現在の文化財保護システムでは助成の対象となりにくい伝統行事、郷土芸能を継続的に執り行えるよう支援することです。各種保存団体のご尽力には頭が下がりますが、様々な困難を乗り越えていくのは大変なことに違いありません。観光資源として認知されている祇園祭山鉾の小修理や京都五山の送り火施設の整備もさることながら、各地域の皆さんが先祖から受け継いでこられた伝統芸能は、それぞれが固有の伝統行事として暮らしに息づき、郷土の絆となっていることでしょう。今後もできうるかぎりの支援を惜しまない覚悟です。

三つめは、文化観光資源をとりまく自然環境の保全とその整備への助成です。私たちは古来、自然とともに生きてきました。建造物、美術工芸、そして伝統行事、伝統芸能もすべて、自然との共生のなかから生まれてきたといっても過言ではありません。このような広い視野からの助成も検討していきたいと考えています。

有形・無形・民俗、あるいは記念物・文化的景観や伝統的建造物群を問わず、むしろ忘れられがちな草の根的保存活動に敬意を表しつつ、些細かもしれませんが、それらが当財団助成によって生き生きと蘇り、さらに魅力的な日本文化の表象として人々に親しまれながら、観光資源にも資する存在となることを願ってやみません。