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木造 薬師如来坐像

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赤間薬師堂

京都とその周辺の里と呼ばれた地域には、村民たちによって長い歴史のなかで護り伝えられてきた古い由緒をもつ古仏が、数多く遺されています。

今回、それらの中から京都市伏見区醍醐の赤間あかま薬師堂に安置される「木造薬師如来坐像」(京都市指定有形文化財)についてご紹介します。

真言宗醍醐派の総本山醍醐寺の北に位置する赤間薬師堂に、この「木造薬師如来坐像」は安置されています。本像は、寄木造、漆箔、彫眼の技法による等身大の薬師如来坐像で、藤原時代に京都を中心に流行した定朝様じょうちょうようの特色をよく示した平安時代後期に制作されたものと考えられています。

江戸時代中期の名所・旧跡、縁起などを記した『山州名跡志』(正徳元年・1711年成立)によると、源平の争乱による火災を避けるため赤間関あかまがせき (山口県下関市)の寺院から移安したものと伝わり、旧地に因んで「赤間薬師」と呼ばれるようになったと記載されています。本像は、およそ800年間にわたって当地域の人々の篤い信仰心と崇敬を集め、今日まで護り伝えられて来た古仏です。

日頃、赤間薬師堂と薬師如来坐像のお世話をされている赤間薬師講の山崎伸一さんと中井久子さんのお二人からお話しを伺いました。

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写真上:毎年9月23日に赤間薬師講の皆さんが揃い行事が行われる。
下:お話いただいた山崎さん(左)と中井さん(右)

「現在、赤間薬師講として町内の10軒の家で薬師堂とお像のお世話をしています。平成20年に修理を行い、昔の修理の際に金箔が施されていたものを、もとの漆箔の姿に戻しました。修理にあわせて薬師堂の改修工事も行いました。薬師像は文化財ですので、管理上防災、防犯設備も整えました。仏像についての昔の記録は何も残っていないのですが、この地域の大事な仏さまとして先祖代々皆が信仰し、私も子供の頃からよく親しんできましたので、大変思い入れを持っています。」(山崎伸一さん)

「毎月12日皆でお世話をしています。ここには、お地蔵さんもありますので、地蔵盆にも集まります。毎年9月23日には、講の皆が揃ってお堂の除草など掃除やおつとめをしています。お薬師さんということで、これまで長い間、地域の人が代々お世話をしてきました。心の支えにもなっています。今後、私達から次の代にこれまでと同じように引き継いでいけるのか不安はあります。」(中井久子さん)とお話しされました。

京都の市中には、寺院だけでなく、地域の人々の信仰心と崇敬によって護られている仏像が無数にあります。この赤間薬師堂の薬師如来坐像をはじめ、地域に伝わる文化遺産が大切に次の世代に受け継がれていけるように、皆様のご協力とご支援をお願いします。

撮影/神崎順一
参考・引用文献
「京都市の文化財−第8集−」平成3年 京都市文化観光局文化部文化財保護課発行
会報92号「京の里の古仏−行基の心が流れる−」井上 正