伝統行事・芸能功労者に聞く

京都には,長い歴史を伝える行事や芸能が数多く伝承されています。

京都市文化観光資源保護財団では,毎年京都の伝統行事・芸能の保存継承に長年にわたり貢献されてこられた功労者の方の表彰を行っています。この表彰制度では,これまでに486名の方々を表彰し,その功績を称えてまいりました。

平成22年度にこの表彰を受賞されました皆さんに『後継者に伝えたいこと,望むこと』をテ−マにご意見をそれぞれ寄せていただきましたので,ご紹介することにします。

平成22年度 伝統行事・芸能功労者表彰

イメージ

受賞された皆さん(順不同、敬称略・カッコは、年齢)

賀茂競馬保存会 堀川  潤(57)   蹴鞠保存会 大空 幸雄(60)
藤森神社駈馬保存会 清水和三郎(82)   平安雅楽会 喜多 忠嗣(75)
北白川伝統文化保存会 西村 知道(63)   吉祥院六斎保存会 山田 忠男(78)
鞍馬火祭保存会 田中 義一(65)   梅津六斎保存会 金子 幸司(45)
久多宮の町松上げ保存会 北中  透(80)   今宮やすらい会 上田 正樹(61)
一乗寺八大神社剣鉾保存会 井上  誠(50)   市原ハモハ尼講中 瀬戸  進(71)
嵯峨祭剣鉾保存会 山田 直市(72)   一乗寺郷土芸能保存会 西村 正久(76)
梅ヶ畑剣鉾保存会 吉岡 孝治(65)      

皆さんにとって伝統行事・芸能とは。

京都で行われる行事や芸能は,京都の財産であり,日本の宝です。私がかかわっている賀茂競馬は,918年間続く行事で,私の家は上賀茂神社に奉仕する旧社家で,これまで代々奉仕してきました。私も参加することになりこれまで奉仕し,次第に継続させていくことの重要性,祭事を支えていくことに今では喜びを見出しています(堀川さん)

地域住民として,伝統行事は地元の文化であり保存継承していく責任があると思います。 (清水さん)

最初は,うまく出来ずに苦闘の連続でしたが,行事がいかに地元の皆さんから大切にかつ,尊厳性が高いのかということがわかり,これまで続けられてこられました。(井上さん)

子供の頃,父が剣鉾を差していたので祭りが近づくと練習を毎日見学していました。中学生になり自分も練習するようになり,指導を受け青年団に入り従事するようになりました。(嵯峨祭剣鉾保存会・山田さん)

京都に育ち,若い頃から鑑賞側でいましたが,知人からの誘いで蹴鞠に関わることになりその奥義を垣間見るようになってきてから「鞠道」にのめり込み,還暦を迎えた今日元気で居られるのは,「蹴鞠」に関われる機会を得た事と考えています。(大空さん)

六斎念仏は,長い歴史と伝統を持つ芸能で京都市民や観光客によく親しまれています。私達の頃は,15歳になると青年会(現在の保存会)に入会してお互い技を競いあったものです。(吉祥院六斎保存会・山田さん)

昔から受け継がれてきた伝統芸能は,やはり奥が深いと思います。小学校の高学年の時に参加しましたが,沢山の方に見ていただき楽しんでいただきたいです。(金子さん)

私にとっては,小学校1年生以来続けてきたもので,今では切っても切れない生活の一部になっています。(上田さん)

組上げられる新旧の木材(写真:左)と葺替えの様子(写真:右)
嵯峨祭剣鉾差し(左) 嵯峨祭の剣鉾差しの練習に取り組む子供たち(右)

長年にわたり取組んでこられた原動力は。

高盛の小芋を2.3人で円錐形に積み上げていく担当をさせいただいていますが,かなりの技術を必要とする作業です。いつか,一人で積み上げたいと思い励んでいます。(北白川伝統文化保存会・西村さん)

私は,当年82歳に成りましたが,これまで見習い教えられながら今日まで続けられてきました。火の神と崇められる愛宕神社に関わる行事で,人手不足や行事が出来ない時は火災や災難がおこると伝えられていることから今日まで地域をあげて続けられてこられました。(北中さん)

やはり地元の人々との関わり,特に年配の方々から尊厳性をもって剣鉾をとらえられていることを痛感し,地元で生まれている者として継承していき益々発展させていきたい。続けていくにあたって,良き先生と剣鉾を盛り上げていこうという若者と多くの交流をもてたことが良かったと思います。(井上さん)

18歳から長年続けてこられた原動力は,地域の人の支え,先人の指導のおかげと思っています。この伝統行事を自分が後世に残したい一心でした。練習中は,剣鉾を倒し迷惑もかけましたが,指導者の心遣いで挫折しなかったことが,今日の私が有ると思います。(吉岡さん)

奏楽とは別に,後継者の育成に努める事を担っています。若手が諸行事で活躍してくれていますが,更に高度の技量の稽古に励んでいます。この人達の上達の様子が,私自身の向上心の原動力として普段の練習を疎かに出来ません。この人達が,いずれ指導者として次の世代に伝承してくれる事を願っています。(喜多さん)

六斎は,やはり演者も楽しめるのが良いところではないでしょうか。演目も沢山ありますが受け継ぐのが難しく,保存会の方も高齢になられ教えてもらうのが困難になってきているのが残念です。(金子さん)

祖父以来,引き継いできた氏子としての責任感と将来に自分の子孫に継承していくということを生きがいにしています。(上田さん)

唄うことが好きだったので,これまで取り組んでこられました。地域のために多少でも役に立ちたいと思っています。今後も地域の郷土芸能をより一層の努力をして発展させていきたいと思っています。(瀬戸さん)

今後将来に伝承していくために,後継者に伝えたいこと。望むこと。

組上げられる新旧の木材(写真:左)と葺替えの様子(写真:右)
京都市左京区静市に伝承される「市原ハモハ・鉄扇」。小学校の協力を得て、児童に指導されている。
組上げられる新旧の木材(写真:左)と葺替えの様子(写真:右)
京都を代表する民俗芸能「六斎念仏」の技芸を披露する子供たち。
(写真は、「京の郷土芸能まつりー大集合!京都の六斎念仏」より)

京都で生まれ育った者には,その歴史や伝統文化が身近にあり,あたりまえのように感じられますが,仕事の関係で京都を離れてみて,日本の歴史そのものが息づく街とその贅沢な環境に離れてみてはじめて感じることがあります。日本の伝統文化とは,日本の宝であり自分達が継続していくという誇りと強い意思をもって参画願いたいと思います。 (堀川さん)

駈馬神事には,行事に必要な多くの要素があります。世話方,乗子ともに神事の全ての要素を理解して頂きたいと思います。又,世話方を経験して,安全にかつ,盛大に後世に保存継承していくことをお願いしたいと思います。(清水さん)

与えられた役割は,何であれ頑張って欲しいです。高盛御供献饌の儀を簡素かせず,本来に戻して執り行いたいと思っています。(北白川伝統文化保存会・西村さん)

現在,どの伝統行事も後継者不足ということが問題となり,私どもの剣鉾においてもここ15年くらい後輩と呼べる方の入会がなく,今後の大きな課題となっています。まず一度剣鉾を体験してもらい,京都という歴史ある所で長年かけて発展してきた行事を理解してもらい若者に携わっていただきたいと思います。私としても色々な場所で,アピ−ルし,この京都独特の文化に携われることを伝えていきたいです。(井上さん)

剣鉾差しの後継者が少なく,育成する為に子供用の剣鉾を新調し,小学生に親子参加で練習の様子を見学してもらい後継者育成に協力をお願いしています。(嵯峨祭剣鉾保存会・山田さん)

現在,梅ヶ畑には約20名の剣鉾差しがおり,この人達が同じ様にこの行事を伝承させて欲しいと思います。又,地域の若者が一人でも多く参加して,地域を盛り上げて欲しいと思います。(吉岡さん)

私自信35年にして志途中であり,更に研鑽に尽きるとも考えています。後継者の人達も毎回のお稽古の度に目標をもって,到達するまで追求していただきたい。今年度より小中学生以上の子ども達に指導を始めたいと思っています。そして,一人でも多くの人に蹴鞠を知ってもらい参加して頂きたいと考えます。(大空さん)

私は,雅楽が心の拠り所です。雅楽の技量を伝承育成する為,葵祭をはじめいずれの行事においても使命感を抱いて奏楽しています。(喜多さん)

近年は,小学生を中心に中高生を交えた子供六斎会が結成され,後継者育成が計られています。保存会員の高齢化の為,保持曲目が減少していますので,子供六斎会の育成が急務です。保存会が一層の努力をして行かねばなりません。(吉祥院六斎保存会・山田さん)

京都には,古くからの素晴らしい伝統芸能が沢山ありますが,もっと多くの人に後継されるように広く募って後世に残されるようにご協力をお願いします。(金子さん)

諸先輩から引き継いできた伝統芸能を,形を変えずに後世に伝えていきたい。マニュアルも何も無い伝統芸能を正確に伝えていきたいし,後輩にも厳しくしていきたい。(上田さん)

一昨年より小学校の協力を得て,児童に地域の郷土芸能の指導を行っています。このような事が今後広く生かされるよう指導し伝えていきたいと願っています。(瀬戸さん)

古い起源をもち京都市無形民俗文化財でもあるこの芸能を,保存会員自らが能力向上につとめ,音頭と踊りの披露にも力を入れながら,後継者育成に十分留意して活動を続けていきたいと考えています。(一乗寺郷土芸能保存会・西村さん)