私たちのまち京都は,世界文化遺産をはじめとして優れた歴史・文化と山紫水明の豊かな自然が調和するまちであり,平安建都以来1200年余の長きにわたり,日本の文化芸術の中心地として栄え,有形・無形の文化財が市内の随所に残されています。
 時代を越えて守り継がれてきたこれらの文化財は,先人たちの精神活動をしのぶよりどころであり,物事のとらえ方や表現方法までも知ることのできる道しるべでもあります。
 今日,文化財を取り巻く環境は日々大きく変化しておりますが,これら先人たちから受け継いだ世界に誇る京都の文化財を愛護し,後世に伝えることは,京都に住み,京都に関わるすべての者に課せられた重要な使命です。
 京都市では,京都市基本構想に掲げられ「安らぎのあるくらし」と「華やぎのあるまち」を実現していくために,「市民の皆様との信頼とパートナーシップ」をより一層確実なものとする「京都市市民参加推進条例」を策定し,さまざまな施策を推進しています。
 これらの施策の基本となるのは,やはり安全で安心な京都のまちづくりであり,防災対策は何より重要であると認識しています。
 また,本市がこの21世紀に大きく飛躍するため,桝本頼兼京都市長が提唱する「観光客5000万人構想」を実現していくうえでも,文化財の保存は必要不可欠なものであると言えます。
 さらに近年,市民の方々のボランティアに対する関心が高まっています。市民がボランティア活動を行うにあたり,行政の役割は「ボランティア活動に関する情報提供,普及,啓発」や「橋渡し」などであることから,消防局では,特に文化財を核とし,文化財関係の皆様と市民の皆様とのコミュニティを育み,災害に強い組織づくりを進める,「文化財市民レスキュー体制の構築」を推進しています。
 消防局では,従前から文化財を火災からまもるために,文化財を所有し,管理する関係者の自主防火責任の履行と自衛消防体制の確保が徹底されるよう努めているところです。
 しかしながら,すべての文化財社寺が,不断の火災の警戒や自主防火管理,あるいは万一の場合の初動活動が万全かと言えば,必ずしも「万全だ」とは言い切れない状況にあります。
 文化財が所在するお寺や神社の多くは,広大な敷地に木造の建物が隣接して建ち並びまた,一般的に誰でもが出入りでき,境内が開放的なため放火や火遊びなどによる火災の危険があります。一方,文化財関係者や従業員が少数で比較的高齢である場合が多くなる傾向にあることから,広い敷地の巡回や初動の活動等を十分に行うことが一層困難になっている状況にあります。
 万一,火災が発生した場合,119番通報から消防隊が火災現場に到着するまでには,一定の空白時間があります。文化財関係者の行う初動活動によって,この空白時間に被害を大きくしないことは極めて重要なことですが,文化財関係者だけで十分に活動できない場合,市民の皆様の協力を得ることによって,文化財を火災から守ることが出きるのではないかと考えています。
 文化財を火災などの災害から守り,後世に引き継いでいくためには,文化財の関係者と地域の皆様,消防機関などの各関係者がお互いに協力する体制づくりが大変重要です。地域の皆様が文化財の関係者と協力して,できる範囲での活動をしていこうとする体制がこの「文化財市民レスキュー体制」であり,全国でも初めての取組です。さらにこの活動を通じて,災害そのものの知識と技術を身に付けて頂き,広く市民全体の災害行動力のレベルアップにつなげていきたいと考えています。
この文化財市民レスキュー体制の担い手となっていただくのは,

○文化財周辺の住民
○文化財周辺の事業所
○文化財周辺の自主防災組織
○文化財に関連する氏子や各種の団体の関係者

です。これら市民の皆様のご理解とご協力によって,文化財を守るレスキュー体制が京都市内の各地で着々と産声を上げております。
 平成12年度から5年計画で200組織の構築目標としておりますが,1年余りを残した現在,すでに190組織を超え,予想以上のペースで結成されています。
 このような状況をみますとき,市民の皆様の防火防災に対する強い心意気を感じるところであり,「地域の文化財はわたしたちが守る」という愛護思想のもとに,「伝統的に高い防火意識」が「具体的な行動力」につながっているのではないかと考えています。
 また,結成されたレスキュー体制には,平常時や災害時に使用していただく活動器材の配備を行っています。防炎シートや担架,召集用ベル,ヘルメット,夜光チョッキなど14種類の器材を活用した自衛消防訓練を実施するなどにより,文化財市民レスキュー体制の自立的な活動につなげていきたいと考えております。
 今後とも,地域の皆様から自然発生的に文化財市民レスキュー体制が増え,自主・自立的な文化財を核とした地域コミュニティへ発展していくものと考えています。
 文化財は,先人たちの努力と汗の結晶です。そのかけがえのない文化財が取り返しの付かないことになる前に,「自分たちのまちは自分たちでまもる」,「地域の文化財はみんなで協力してまもる」という共通認識のもと,地域の皆様が一体となって,文化財市民レスキュー体制を確立され,関係者の連携により総力を挙げて文化財を守っていきたいと考えています。