平成28年度 伝統行事・芸能功労者表彰受賞者に聞く まつりの継承−その苦労と若い後継者への期待

京都には、長い歴史を伝える伝統行事、伝統芸能が今日まで数多く継承されており、四季折々にそれぞれの地域において行われています。当財団では、これら行事・芸能の保存執行に助成金を交付すると共に、設立当初より毎年、長年にわたりその保存継承に功績のあった功労者を表彰し、これまでに534名の皆さんの功績を称えてまいりました。このたび、平成28年度に受賞されました10名の方々に日頃携わっておられるなかでのご苦労やこれから受け継ぐ若い後継者に期待することなどご意見をお寄せいただきましたのでご紹介します。
松明を担ぐ若い後継者

「鞍馬の火祭」松明を担ぐ若い後継者
写真/田中一郎 撮影

芸能功労者表彰式

平成28年度 伝統行事・芸能功労者表彰式

伝統行事・芸能功労者表彰制度 多年(10年以上、年齢45歳以上)にわたり伝統行事や伝統芸能の保存執行に当たると共にそれを広く一般に公開し、後継者の指導養成・道具類などの製作・修理等の技術修得などに功績のある方を表彰する制度。

平成28年度伝統行事・芸能功労者表彰を受賞された方々(敬称略・順不同,カッコは年齢)

受賞藤森神社駈馬保存会
齋藤 英嗣(70)

受賞北白川伝統文化保存会
森 敦司(55)

受賞鞍馬火祭保存会
滝川 弘次(64)

受賞久多宮の町松上げ保存会
常本 治(62)

受賞蹴鞠保存会
吉村 啓司(66)

受賞今宮やすらい会
上田 勉(59)

受賞市原ハモハ尼講中
P戸 賢三(67)

受賞一乗寺郷土芸能保存会
筋 邦男(82)

受賞広河原郷土芸能保存会
井上志津子(93)

受賞真如堂十夜鉦講
梶谷 省栄(83)


ご自身にとって伝統行事・芸能とは。

物心が付いたときから接してきた行事です。祖父も父も熱心に取り組んできており、自分も当然守っていく行事と思っています。(常本さん)

物心がついた頃から当たり前の様にありました。祖父、父に連れられ祭りの稽古に出ていましたので。このようにして祖父から子、孫へ伝承されていくものだと思います。(上田さん)

知人からの誘いで保存会に入会しましたが、それまで地元に継承されている伝統行事と知りませんでした。先人の苦労と伝統の重みを感じると共に、地域の貴重な財産として守り継いでいく必要があると考えています。(森さん)

地元で生まれ育った為、幼少より見て育ちました。参加することは自然の流れで、地元の伝統行事を保存継承することは当然の義務と考えています。(齋藤さん)

地元には幼少の頃から「講」や「踊り」など沢山あり、親しむことが出来ました。今では少なくなりこれ以上減らすことは出来ないという思いで、人材の確保と育成に邁進することを自分に言い聞かせています。(筋さん)

奈良県在住で保存会の奉納の折に、入会の機会を得ました。以来京都に通うこと34年になります。鞠を蹴り続けるというなかに連係をとり、心がひとつになる瞬間を味わう嬉しさ楽しさは言葉では表現出来ません。(吉村さん)

村の伝統遺産であり、地元で生まれた者として行事を実施するため各団体と交流を密にして日々活動しています。(P戸さん)

子供の時から参加してきて、私自身とっても楽しく、歌ったり踊ったりしてきました。(井上さん)

鞍馬区からの選挙で選出されたのがきっかけでした。神社の氏子総代でまつりに奉仕しています。鉾や太鼓、鉦など道具の組み立て方などを引き継げる様につとめいきたいと思っています。(滝川さん)

年一回の行事ですが、伝統ある行事を指導、協力出来ることを誇りに思い、保存と発展に協力しなければならない一心で臨んでいます。(梶谷さん)


「今宮やすらい花」練習に励む子ども達(左)と小鬼(羯鼓)姿(右)
今宮やすらい会提供

長年にわたり取り組んでこられた原動力は。

室町時代から継続されてきた行事で、守らないといけない地元を愛する心です。一時期中止になったのを発起人となって保存会を再結成し、安全の向上と地区外の人にも協力してもらうことになり良かったと思っています。(常本さん)

長い歴史あるまつりを自分達の代で途切れさせてはいけないという思いがあります。(上田さん)

誰かがやらなければ伝統の灯は消えてしまうとの思いで、取り組んでいます。(森さん)

地元に伝わる伝統行事を保存継承していくことは、当然の事ととらえて取り組んできました。(齋藤さん)

幼少の頃から多くの伝統文化や芸能が地元に存在したが、現在では僅かしか継承されていない状態で、如何に会を継承していくかについて話しあいながら、地元の若い方々に参加して一緒に継承しようと声掛けをして努力しています。(筋さん)

鞠を皆が揃って蹴り続けることは、自然に寄り添い調和することではないかと感じています。難度が高くなり上手くいかないことが多いですが、なりゆきに身をまかせることが真髄かなと思っています。(吉村さん)

仕事で忙しい時、体調不良の時もこれまで続けられてきたのは、家族の協力なくして活動出来ず妻のお蔭と感謝しています。(P戸さん)

楽しい村の祭を皆さんと一緒に楽しみ、歌ったり踊ったりすることで伝統を守っていけたらと思い続けてきました。村の若い人が少なくなり淋しい思いがありますが、元気に歌えるうちは頑張っていきたいと 思います。(井上さん)

まつりに使う材料の確保が毎年大変です。まつりが終ったらすぐに次のまつりに向けて材料の調達と準備が原動力になっています。(滝川さん)

長年にわたり取り組んでこられたのは、伝統行事を保存してゆかねばという自負心です。振り返れば今日まで続けてこられたのは講中全員の賜物と感謝しているところです。(梶谷さん)


「藤森神社駈馬」行事
乗馬に備え練習する後継者たち
藤森神社駈馬保存会提供

「北白川高盛御供」行事
白川女姿で神饌を奉納する女子学生
撮影/神崎順一

今後、若い後継者に伝えたいこと、望むことは。

常に、地域及び後継者に情報発信していく事。ボランティアや学生の協力も仰ぎ、地区外の人とも接点を太くしていくことが必要。伝統行事を継承する事により地域の活性化を図って欲しい。(常本さん)

小学生から大人まで幅広い年齢層の人々で運営されています。高校、大学と年齢が上がるほどクラブ活動などの要因で参加出来ない人が増えてきます。また、就職などにより地元を離れる人も多く、いかに続けて参加出来る人を確保するかが課題です。せめてまつりの時は何事にも優先して帰って来て参加して欲しいと希望します。(上田さん)

まずは、人が足りません。なんとか地域の方に保存会に入会してもらいたいと考えています。(森さん)

地元に伝わる伝統行事を大切に思い、継続保存していく事を使命感と誇りに思い、継承して欲しいと思います。(齋藤さん)

この踊りは、音頭の合いの手の声と踊り子の手拍子だけで踊るために、他地区では見られない非常に珍しい音頭と踊りです。現代離れした物静かな文句のために若者受けが難しく、踊りも物静かな踊り方であるが、良く聞いてみると楽しめる歌詞で出来ている。定期的に地元の小学校の児童たちに披露を兼ねて指導し、父兄にも積極的にアピールし身近に感じて頂くようにしている。DVDやCDに記録し、興味ある方に配布しています。練習日の曜日と時間を決めて練習を気軽に見て頂けるよう努力しています。 (筋さん)

装束が伝統的な様式が多いので、有職故実の研究が必要であるので、共に探究したいと考えています。普及のために鞠の製作の新しいアプローチ、大量に安価に作れないものかと考えています。(吉村さん)

各団体との対人関係を大事にして何事も謙虚な心構えで取り組んで欲しい。無理をせず活動して欲しいと願っています。(P戸さん)

村に住む若い人が少なくなってきて、淋しいことですが、少しでも街に住む人がまつりの日に帰ってきて、伝統を引き継いでくれたらと思います。(井上さん)

火祭は、男の祭りなのでまず自分の息子、孫に材料の調達、作り方を伝えていきたいと思っています。今の時代は、録画で引き継ぐ事も出来ますが、若い人には目と頭ではなく手と体で覚える様にして貰いたいと望んでいます。(滝川さん)

将来、継承していくためには、行事の進め方など細部にわたりマニュアル化しなければと思っています。現在8名必要なのに15名しか存せず、募集を常にしていますが、人員の確保に苦労しています。何か良いPRの機会がないものかと思っています。(梶谷さん)

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写真3 撮影/中田 昭(写真家)
写真4,7,8,9,10 提供:京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課


  1. 「藤森神社駈馬(ふじのもりじんじゃかけうま)」
    5月5日、京都市伏見区の藤森神社で行われる伝統行事。早馬ではなく、伝承されている数々の曲芸的な乗馬の技を演じる駈馬行事。
  2. 「北白川高盛御供(きたしらかわたかもりごく)」
    体育の日の1週間前の日曜日、京都市左京区の北白川天満宮で行われる伝統行事。夜を徹して調製した古式を伝える神饌を、翌日の早朝に白川女姿の女性が行列を組んで奉納する供献行事。
  3. 「鞍馬火祭(くらまひまつり)」
    10月22日、京都市左京区の由岐神社で行われる伝統行事。剣鉾や神輿と共に大・小の松明によって繰り広げられる火の祭礼。
  4. 「久多宮の町松上げ(くたみやちょうまつあげ)」
    8月23日、京都市左京区久多で行われる伝統行事。柱松の先端にあるモジをめがけて火の付いた上げ松を投げ上げ点火させる愛宕山へ献灯する柱松行事。
  5. 「蹴鞠(しゅうきく)」
    1月4日、京都市左京区の下鴨神社の蹴鞠始めと7月7日、京都市上京区の白峯神宮の七夕祭などで行われる伝統芸能。平安時代より宮廷を中心に行われた貴族の遊戯で、儀礼的な作法、流儀、装束などが現在、保存会において公開伝承されている。
  6. 「今宮やすらい花(いまみややすらいばな)」
    4月第2日曜日、京都市北区今宮神社の氏子区域で行われる伝統芸能。春花の頃流行する疫神を鎮め、無病息災を祈願するため風流の踊りを囃し奉納する祭礼。
  7. 「市原ハモハ踊(いちはらはもはおどり)・鉄扇(てっせん)」
    8月16日、京都市左京区静市市原で行われる伝統芸能。太鼓と鉦で踊られるハモハ踊りと近世に流行した鉄扇踊りで、当地域に伝承されているお盆の念仏踊り。
  8. 「一乗寺鉄扇(いちじょうじてっせん)」
    8月31日、京都市左京区の八大神社で行われる伝統芸能。楽器を用いず特徴のある音頭に合わせて男女が輪踊りをするもので、当地域に伝承されているお盆の念仏踊り。
  9. 「広河原ヤッサコサイ(ひろがわらやっさこさい)」
    8月17日と24日、京都市左京区広河原で行われる伝統芸能。男女の掛け合いの歌に合わせて踊るところに特徴があり、古い形態をとどめた当地域に伝承されているお盆の念仏踊り。
  10. 「真如堂の十夜鉦(しんにょどうのじゅうやがね)」
    11月5日、京都市左京区の真正極楽寺(真如堂)で行われる伝統芸能。独特の念仏にあわせて鉦鼓を打つ十夜鉦で、十夜法要の発祥の当寺に伝承されている。